Ph.D. Thesis - 博士論文 -

Pentaquark Theta+
Ph.D. Thesis, Kyoto University (Novemver, 2014)
" Search for the pentaquark Θ+ via the π- p → K- X reaction at J-PARC " (4.0MB) [pdf]

概要


通常ハドロンはクォークと反クォークからなるメソンと3つのクォークからなるバリオンに大別されるが、これらの範疇に収まらない4つ以上のクォークからなるエキゾチックハドロンは低エネルギーでのクォークの動力学を調べるのに最適であり、精力的に研究がおこなわれている。ペンタクォークΘ+ は最少構成要素としてuuddsbar 状態からなる5つの構成子クォークを含むエキゾチックハドロンである。Θ+ は1540 MeV程度と軽い質量を有し、幅が数MeV以下と非常に狭いと考えられている。もしこのような新奇な粒子が存在するのであれば、ハドロンの内部構造を研究する上で大変興味深い情報を提供する。過去に多くの探索実験がおこなわれたが、実験的な結論は混沌としている。更なる研究のためには高統計かつ高分解能の実験が要求される。

大強度陽子加速器施設J-PARCにおいてπ- p → K- X反応を用いた欠損質量分光法によるペンタクォークΘ+ 探索実験をおこなった。0.85 g/cm2 厚の液体水素標的に対して運動量2.01 GeV/cのπ中間子ビームを8.1×1010 照射した。高分解能スペクトロメータシステムにより、Θ+ に対する質量分解能2.13 MeV(FWHM)を達成した。既知のΣハイペロン生成反応とビームを用いた較正データを使って運動量の較正および分解能の評価をおこなった。Θ+ に対する欠損質量の測定精度は1.4 MeVと見積もられ、もしΘ+ が生成されれば、顕著なピークが観測されて質量と幅を良い精度で決定できることを確認した。また、Σ生成反応の微分断面積が過去の実験と一致していることを確認し、さらに過去の実験よりもよい精度の測定結果を示した。π- p → K- X反応の欠損質量分布で1500--1560 MeVの質量領域においてΘ+ に対応するピークは観測されず、前方散乱角2--15°における生成微分断面積の上限値として0.28 μb/srを得た。これは1.92 GeV/cの入射ビーム運動量でおこなった先行実験の上限値と同じ程度あった。

反応機構からの考察に基づくと、π- p → K- Θ+ 反応の断面積はΘ+ の崩壊幅と関係がある。今回得られたデータと先行実験のデータを合わせて有効ラグランジアンを使った理論計算と比較することにより、Θ+ の幅に対する上限値を評価した。Θ+ のスピン・パリティーが1/2+と1/2-の場合に対してそれぞれ幅の上限値が0.36 MeVと1.9 MeVと見積もられた。これらは先行実験の上限値を半分にまで下げる結果となった。スピン・パリティー1/2+の場合については、過去にBelle実験から報告されている上限値0.64 MeVよりも厳しい制限を与える。また、DIANA実験ではΘ+ の幅として0.34±0.10 MeVという値が報告されているが、今回の上限値はこれと完全には矛盾しない。